曲目解説

酒井多賀志オリジナル作品 曲目解説

(編さん・文責:酒井流美)

~今日、過去において絶対的力を持っていた権威は、いたる所で相対化されつつある。

ヨーロッパの模倣に終止する時代は終わったのである。<我々のための芸術>は始まっているのだ~

(●1979年、カテドラル実況録音シリーズLPレコード発売パンフレットより)

【はじめに】

 子供の頃から父がよく言っていました。「音楽家たるもの自作自演ができなくてはいけない」と。1980年代、父は自作自演の道を歩みだしてから、自身の表現の追求として、オルガニスト自らが作曲し、演奏することに強い信念を持って父のスタイルを築き上げてきました。遺作CDの解説には「オルガンの名曲はすべてオルガニスト自身によって作曲されてきました」とあります。パイプオルガンのメカニズムと音響を熟知しているオルガニストこそ、最も効果的にオルガンを鳴らすことができる、と確信していたのです。

 父の使っていたパソコンの中には、理屈屋の父らしく、オリジナル作品から始まり、バッハやフランク等の曲目解説が一つ一つ丁寧に記されていました。父が生涯作曲した曲は、OP.77、リリースしたCDは全17巻です。音源や楽譜をご提供するだけでなく、作曲者の想いやインスピレーションも伝えていかなくては後世の方々に音楽を遺していくことにはならないと思い、この曲目解説の編集作業を始めました。データの残っていないものについては、過去の自主企画コンサートのプログラムやCDの曲目解説から掘り起こして加えていきました。まだ全ての曲の解説文を揃えられていませんが、今後も発掘作業を続け、見つかり次第、掲載していきたいと思います。

 また、自主企画コンサートのパンフレットに寄せた父のコメントからは、その時代、その時代で父が何を考え作曲をし、演奏活動を行ってきたかをエネルギッシュに、そして生き生きと感じ取ることができます。父の作品理解を深めていただくために、いくつかオリジナル作品への想いを寄せた文章を抜粋し、☆コラム☆として入れこんでみました。

 曲目解説の中から、その曲が生まれた背景を知っていただき、ご自身の自由な感性と想像力によって父の作品を発展させていただければと思います。

ぜひ天国にいる父と、引き続きオルガン音楽の対話を楽しんでください。

                        2020年12月1日

☆コラム☆

私は1981年から、日本の詩情をオルガンでおもいっきり表現してみたい衝動にかられ、完全音程を主体にした響きの中で、それを展開しています。(略)

「流離」OP.17や「望郷の夢」OP.18などの曲を演奏していると、遠い祖先とオルガンで対話しているような、また時間の意識を超えてオルガンによって私達の心の中の懐かしい何かが呼びさまされていくような気分になります。(略)

一方、私にとってバッハやフランクの作品は、依然として最も大切なレパートリーですが、それらは、私の心を表現するためにつくられたのではなく、それぞれの作品が、独自の語るべき声を発しているのです。ですから私の心の奥からの声を音にするためには、私独自の作品がどうしても必要なのです。私は自作自演という手段を手にして初めて、自分は音楽家なんだと思えるようになりました。今ではバッハやフランクの作品が語っている声が良く聞こえますが、自作自演を始める前は、それがあまり聞こえず、私が表現したいものをバッハやフランクの作品に押しつけていたのです。

●1997年9月24日ふたば会25周年記念コンサートパンフレットより

【注記】

「心象的イメージ」について

初期の作品については、下記のように記されている箇所があります。

●1983年11月23日パイプオルガンコンサートNo19パンフレットより

「J.Sバッハは何年に生まれて」とか「この曲は何の形式で」という解説は、作品に対する三人称的アプローチにすぎない。演奏会というものは、それが一回性に根ざすものであるならば、二人称の関係において成りたつものであると私は考える。それゆえ、私が現在この作品に何を感じ、何に注目しているかを述べる方が、より実際的な意味があると思えるので、現在の私の心象的イメージを語らせていただくことにしたいと思う。

「曲目解説」について

*二通りの解説がある場合は、A) B)で示しました。

曲目解説を引用、転載いただく場合には、出典を「酒井多賀志公演会 記念事業HPより」と明記してください。無断転載はご遠慮ください。

【目次】

【はじめに】

【注記】

♪Op.1(1981)~Op.30(1990)の曲目解説←クリック 

♪Op.31(1991)~Op.77(2019)の曲目解説←クリック

【参考】オリジナル作品リスト

作品 番号曲名編成備考 (成立年代)
Op.1完全音程を主体にした3つの作品
I レシタティーフ・アリアとコラール
II 二枚のガラス
III   瞑想的トッカータ 3 Pieces consist of perfect intervals I   Recitative, Aria and Chorale II  2 Pieces of Glasses III  Toccata in Meditation
Org(1981)  
Op.2通奏モチーフによる3つの作品
I 音のプリズム
II 流れゆく雲 
III 幻想曲
3 Pieces for the osinato motif op.2 I   A Sound spectrum II  Clouds floating in the air III Fantasy
Org(1982)
Op.3交響的即興曲「光と風と波の心象」
Images of Light Wind and Waves-Symphonic Improvisation op.3
Org(1982)
Op.42つの通奏モチーフの詩
I 「平和への祈り」
II 「トッカータ「断絶」
2 Poems on the ostinato motif op.4 I ”Wish for Peace II  Toccata”Rupture”
Org(1982)
Op.5チェンバロの為の幻想曲
Fantasy for Cembalo
Cemb(1982)
Op.6現代の詩 3章
3 Poems in the present Age op.6
Org(1983)
Op.7組曲「霧の中の幻想」
Suite”Fantasic Movement in the Mist”op.7
Org(1983)
Op.8チェンバロの為の瞑想曲「木もれ日」
(op.8-1) Meditation “Sunbeam filtering through the branches”( op.8-1)
チェンバロの為の瞑想曲「落ち葉の森」(op.8-2)
Cemb(1983)
Op.9瞑想曲「残照」  Meditation “Lingering sun Light”Org(1983)
Op.10「花吹雪」
“dispersing flowers as snowstorm”
Org(1984)
Op.11ソプラノとオルガンの為の3つの詩篇
I    第4篇「私の義を守られる神よ」
II   第13篇「主よ、いつまでなのですか」 III  第145篇「我が神、王よ、私はあなたをあがめ」
3 Psalms for Soprano and Organ I  Psalm4 “Answer me when I call, O God”  II  Psalm13 “How long . O Lord wilt thou quite forget me” III  Psalm145 “I will extol thee, O God my King”
Org
Sop
(1984)
Op.12チェンバロの為の瞑想曲「雨の道」 Meditation “Reiny Way”Cemb(1984)
Op.13アルトとチェンバロの為の3つの詩篇
I 第42篇「神よ、鹿が谷川を慕いあえぐように」
II 第61篇「神よ、私のさけびを聞いてください」
III 第84篇「万軍の主よ」
3 Psalms for Alto and Cembalo op.13 (1984) I  Psalm42 “As a hind cries aloud for running streams”  II  Psalm61 “Hear, O God, my cry,” III  Psalm84 “How lovely is your dwelling. O Yahweh of hosts!”
Org Alt(1984)
Op.14瞑想曲組曲「初夏の風」
Meditative Suite “A pleasant Wind in Early Summer”
Org(1984)
Op.15弦とオルガンの為の幻想的空間Org
String
(1984)
Op.16ふる里の詩 3章
I  「なつかしい景色」 II   「祖先の霊気」
III   「森の朝」
3 Poems of Native Place  op.16 I   “A Recollection of old Scenes”  II   “The Spirit of the Ancester” III    “Morning in the Forest”
Org(1984)
Op.17瞑想的即興曲「流離」 SASURAI-A Meditative ImprovisationOrg(1985)
Op.18組曲「望郷の夢」
I    前奏曲「郷里は、遠くにありて想うもの」
II    「里の娘」
III   「痴話喧嘩」
IV   「丑満時」
V    「お祭りさわぎ」
Org(1986)
Op.19無伴奏ヴィオラのためのソナタViola(1986)
Op.20オラトリオ「ソロモン王の裁き」
Oratorio
(1986)
Op.21オルガンと尺八の為の「古謡組曲」Org
Shakuhachi
(1987)
Op.22オルガンと尺八の為の対話 
Dialogue between Organ and Shakuhachi
Org
Shakuhachi
(1987)
Op.23組曲「春の詩」
I 春一番
II 花粉症
III  おぼろ月
IV  春雷
V  花見酒
Org(1987)
Op.24オルガンと箏の為の瞑想曲「里の空」 COUNTRY SKY-Meditation for Organ and KotoOrg
Koto
(1988)
Op.25オルガン、尺八、箏の為の綺想曲       Fantasia-For Organ ,Shakuhachi and KotoOrg
Shakuhachi
Koto
(1988)
op.外小犬のクーラント         A Puppy’s CouranteOrgop. 25の終結部分から転用
Op.26オラトリオ「ピラトの妻とマグダラのマリア」
Oratorio
(1988) 台本:鏑木孝昭
op.外ミュージカル「森と海のまつり」?  武蔵野市開村100周年記念委嘱
Op.27尺八と箏の為の「清流」(1989)
Op.28交響的幻想曲「曙光」 Symphonic Fantasy ” Prospects”        Org(1989)
Op.29組曲「オルガンへの招待」
I マーチ
II フーガ
III   アリアと変奏
IV 瞑想曲(祈り) V ファンファーレ
VI  トッカータ
Org(1990) (おくとぱす委嘱作品)
Op.30マンドリンとオルガンの為の幻想曲 Fantasy for Organ  and MandolinOrg
Mandolin
(1990) (恩地早苗委嘱作品)
Op.31頌栄541「父、み子、みたまの」 の主題によるフーガ ト長調Org(1991)
Op.32「赤トンボ」の主題による変奏曲                         Variations on  ” Akatombo”Org(1991) (パルナソスホール委嘱作品)
Op.33クリスマス狂騒曲Org(1991) (おくとぱす委嘱作品)
Op.34秋田民謡による幻想組曲
Fantastic suite on Akita Falk Songs op. 34
(1992)
Op.35バス、マンドリン、ピアノ、オルガンの為の 4重奏「逝く春」による  五章    Org
Bass
Mandolin
pf
(1992) (恩地早苗委嘱作品)
Op.36「谷川の水を求めて」による前奏曲とフーガ Prelude and Fugue on ” Sicut cervus” op. 36Org(1993)
Op.37「夏の思い出」の主題による変奏曲Org(1993)
Op.38典礼聖歌に基ずいた3つの小品
I  「幸せな人、神をおそれ」 によるファンファーレ
II  「小さなひとびとの」による幻想曲
III 「愛といつくしみのあるところ」 によるフーガ
Org(1993)
Op.39讃美歌546番「聖なるかな」による変奏曲 Variations on ” Heilig, heilig, heilig, heilig ist der Herr !” Org(1993)
Op.40典礼聖歌に基にした3つのトリオ
I 「ごらんよ空の鳥」 II  「ガリラヤの風かおる丘で」
III  「主を仰ぎ見て」
3 Trios Based on Hymns op. 40 I   ” See a bird in the sky ” II   ” On a breezy hill of Galilee ” III   ” Beholding the Lord “
Org(1995)
Op.41讃美歌353番「泉とあふるる」を主題にした変奏曲Org(1995)
Op.42「アメイジング・グレイス」の主題による変奏曲とフーガ                    Variations and Fugue on ” Amazing Grace “Org(1996)
Op.43「秋田おばこ」による幻想曲
Fantasy on ” Akitaobako”
Org(1996)
Op.44クラリネットとオルガンの為のディアローグ < Dialog > for Clarinet and Organ op. 44Org
Cla
(1996)
Op.45「故郷」の主題による変奏曲、アダージョとトリオ
 Variations, Adagio and Trio on ” Furusato “
Org(1997)
Op.46聖歌「荒野を旅する」を主題にしたパルティータ     
Partita on “Guide me O Thou great Jehovah” op.46
 (1998) (復活之キリスト穂高教会委嘱作品)
Op.47「早春賦」の主題による変奏曲      Variations on “Early Spring”Org(1998) (復活之キリスト穂高教会委嘱作品) 
Op.48「夕焼小焼」の主題による変奏曲      Variations on “yuhyake koyake” op.47Org(1998)
Op.49合唱とパイプオルガンの為の組曲       「未来への旅立ち」
Suite for Choir and Organ “Voyage for the future” op.49
Org
Choir
(1998)] (佼成文化協会委嘱作品)               
Op.50イントロダクションとフーガ二長調              Introduction and Fugue in D majorOrg(1999)  
Op.51ヴォーカルとオルガンの為の「南島の詩五章 」(詞:俊山和則) I ハイビスカス
II はまかぜ
III 手
IV  愛
V  冬の海
Org
vocal
(1999)
Op.52マンドリン、ギター、オルガンの為の序奏とフー ガ        Introduction and Fugue for Mandolin, Guiter,OrganMandolin
Guiter
Organ
(1999)
Op.53マンドリンとオルガンの為の序奏とフーガ    Introduction and Fugue for Mandolin and OrganMandolin
Organ
(2000)
Op.54ヴォーカルとオルガンの為の「花の詩」 (詞:俊山和則)
Ⅰ 菜の花
IIすみれ
III ハイビスカス IV   あじさい
V     ゆり
Org
Vocal
(1999 ~2001)
Op.55イントロダクションとフーガ ホ短調   Introduction and Fugue in E minor  op.55Org(2000)
Op.56イントロダクションとフーガ ハ長調(新世紀21)                                  Introduction and Fugue in Org(2001)    
Op.57クラリネットとオルガンの為の「ヨイスラ節」の主題による幻想曲    
  Fantasy on “yoisurabusi” for Clarinet and Organ 
Clarinet
Organ
(2002)
Op.58日本古謡「さくらさくら」の主題による幻想曲  
Fantasy on ”Sakura sakura”
Org(2003)
Op外ヴォーカルとオルガンの為の「春の花」 (詞:俊山和則Org
vocal
(2004)
Op外ヴォーカルとオルガンの為の「君の手紙」 (詞:俊山和則Org vocal(2004)
Op.59「我は海の子」の主題による幻想曲

Fantasy on ”Ware-wa uminoko”
Organ(2005)
Op.60筝とオルガンの為の幻想曲 Organ
koto
(2005)
Op.61八重山民謡「船ぬ親ユンタ」の主題による幻想曲    
Fantasy on “Uninuyah Yunta”
Org(2006)
Op.62オルガンとマンドリンオーケストラの為の協奏曲=紅葉をめぐって=Org Mandorinorchestra(2008)
Op.63歌「雪の教会クリスマス」 (「クリスマスの晩」(詞:北原白秋)Org
Song
(2011)
Op.64マンドリンとオルガンの為のソナタ  Sonata for Mandolin and Organ Org
Mandorin
(2010)
Op.65マンドリンとオルガンの為イントロダクションとフーガ   Introduction and Fugue for Mandolin and Organ Org
Mandorin
(2012)
Op.66歌曲「悩み多きこの身に」 (詞:田中栄子)Org
song
(2012)
Op.67クリスマスの歌3章  光の産声(詞:手塚久子)
クリスマスの夜は(詞:晴佐久昌英)
クリスマスを祝う(詞:板口冨美子)
Org
song
(制作年不明 始め2曲の 出版:2015)  
Op.68クリスマスの為の前奏曲とフーガ  Prelude and Fugue on ”Nativitate Domini”  Org(制作年不明 出版:2014)
Op.69尺八、筝、オルガンの為の幻想曲 Fantasy for Shakuhachi Koto and Organ Shakuhachi
Koto
Organ 
?  
Op.70晴佐久昌英作詞:ソプラノとオルガンの為の「天国の窓」より3章 「種」 
「生まれておいで」  「風にまかせて」  3Pieces from the Poetic Works “Heaven’s Window” by Masahide Haresaku for Soprano and Organ Op.70 “A Seed”  “Come out in the Light” “As the Wind Blows”
Org
Sop
(制作年不明 出版:2014)
Op.71「世界にひとつだけの花」を主題にしたアリアとフーガOrg(2015)
Op.72晴佐久昌英作詞:ソプラノとオルガンの為の「天国の窓」より「大切なともだち」Org Sop(制作年不明 出版:2015)
Op.73晴佐久昌英作詞:ソプラノとオルガンの為の「天国の窓」より「君は光」 Org Sop(制作年不明 出版:2017)
Op.74尺八、筝、オルガンの為の幻想曲 「一陽来復」Shakuhachi
Koto Organ 
(制作年不明 出版:2017)
Op.75箏とオルガンの為のレシタティーフとフーガKoto organ(制作年不明 出版:2018)
Op.76尺八とオルガンの為アリアとフーガ Shakuhachi
org
(制作年不明 出版:2018)
Op.77晴佐久昌英作詞「天国の窓」より 「朝の気配」 Org song(制作年不明 出版:2019)