曲目解説

OP.28 交響的幻想曲「曙光」 Symphonic Fantasy ” Prospects” op.28

作曲年:1989

・世期末の不安と、21世紀への希望が交錯する現代人の心情を描いた作品で、1989年に作曲しました。中間部の荒々しい足鍵盤のソロは世界の混乱や戦争を表わし、終結部の演歌的なメロディは「曙光」に象徴される希望を表わしています。その間をうめるレシタティーフは、模索する感情、問いかけ、怒り、不安をオルガンで語る言葉として表現したものです。

・「流離」を作曲したのは、バッハ生誕300年にあたる1985年でしたが、その後、邦楽器とオルガンのアンサブルの美しさに魅せられて、オルガン独奏曲の作曲からは遠ざかっていました。尺八や箏との二重奏、三重奏の作曲を通して、日本の音楽の持つ様々な要素をオルガン音楽にとり入れることは、大変楽しく、新鮮で、多くの可能性を秘めています。「曙光」では、そうした成果も生かして、4年ぶりのオルガン独奏曲の誕生です。

【初演:1989年11月26日パイプオルガンコンサートNo30パンフレットより】

心象イメージ
現代がかかえる様々な問題がうみだす「不安感」を「闇」にたとえた作品です。闇が支配している世界では、混沌とした中で激しい暗闘がくりひろげられる。人々は、ほのかにゆれ動き、点滅する燈に一気一憂し、夜明けを待ちわびる。あと少し、夜明けは近い!

初演情報
1989.11.26
会場/武蔵野市民文化会館
演奏者/酒井多賀志