曲目解説

OP.36 「谷川の水を求めて」による前奏曲とフーガ Prelude and Fugue on ” Sicut cervus” op.36

作曲年:1993

「谷川の水を求めて、あえぎさまよう鹿のように、神よ、私はあなたを慕う」という詩篇に基づいて高田三郎氏が作曲した典礼聖歌をテーマにした前奏曲とフーガです。この曲の歌詞は、詩編42が基になっていて、その内容は(キーワードを抜粋)次に示すように、大変深刻なものです。

神よ、鹿が谷川を慕いあえぐように、わが魂もあなたを慕いあえぐ。  人々がひねもすわたしにむかって、「おまえの神はどこにいるのか」  と言い続ける間は、わたしの涙は昼も夜もわたしの食物であった。  わたしはわが岩なる神に言う、「何ゆえわたしをお忘れになりましたか。  なにゆえわたしは敵のしいたげによって悲しみ歩くのですか」と。  わが魂よ、何ゆえうなだれるのか。何ゆえわたしのうちに思いみだれるのか  神を待ち望め。  わたしはなおわが助け、わが神なる主をほめたたえるであろう。                      (日本聖書協会:旧約聖書より)

前奏曲では、あえぎさまよう苦悩を描写し、フーガでは希望を表現しています。終結部のディミヌエンドは、死によっても否定されることのない、たえざる希望をあらわしています。

収録CDタイトル
「酒井多賀志オルガンリサイタル第3集」

初演情報
1993.4.24
会場/秋田アトリオン音楽ホール
演奏者/酒井多賀志