曲目解説
子供の頃から父がよく言っていました。「音楽家たるもの自作自演ができなくてはいけない」と。1980年代、父は自作自演の道を歩みだしてから、自身の表現の追求として、オルガニスト自らが作曲し、演奏することに強い信念を持って父のスタイルを築き上げてきました。遺作CDの解説には「オルガンの名曲はすべてオルガニスト自身によって作曲されてきました」とあります。パイプオルガンのメカニズムと音響を熟知しているオルガニストこそ、最も効果的にオルガンを鳴らすことができる、と確信していたのです。
父の使っていたパソコンの中には、理屈屋の父らしく、オリジナル作品から始まり、バッハやフランク等の曲目解説が一つ一つ丁寧に記されていました。父が生涯作曲した曲は、OP.77、リリースしたCDは全17巻です。音源や楽譜をご提供するだけでなく、作曲者の想いやインスピレーションも伝えていかなくては後世の方々に音楽を遺していくことにはならないと思い、この曲目解説の編集作業を始めました。データの残っていないものについては、過去の自主企画コンサートのプログラムやCDの曲目解説から掘り起こして加えていきました。まだ全ての曲の解説文を揃えられていませんが、今後も発掘作業を続け、見つかり次第、掲載していきたいと思います。
また、自主企画コンサートのパンフレットに寄せた父のコメントからは、その時代、その時代で父が何を考え作曲をし、演奏活動を行ってきたかをエネルギッシュに、そして生き生きと感じ取ることができます。父の作品理解を深めていただくために、いくつかオリジナル作品への想いを寄せた文章を抜粋し、☆コラム☆として入れこんでみました。
曲目解説の中から、その曲が生まれた背景を知っていただき、ご自身の自由な感性と想像力によって父の作品を発展させていただければと思います。
ぜひ天国にいる父と、引き続きオルガン音楽の対話を楽しんでください。(編さん 酒井流美)
2020年12月1日
* Webページに掲載しきれませんでしたが、酒井がこれまで演奏してきたバッハ、フランク等のオルガン曲について、酒井が記した曲目解説がございます。ご希望の方には、解説文をお渡しいたしますので、事務局までお問い合わせください。
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OP外 ヴォーカルとオルガンの為の「春の花」(詞:俊山和則)
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OP外 ヴォーカルとオルガンの為の「君の手紙」(詞:俊山和則)
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OP.59 「我は海の子」の主題による幻想曲 Fantasy on “Ware-wa uminoko” op.59
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OP.60 箏とオルガンの為の幻想曲 Fantasy for koto and Organ op.60
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OP.61 八重山民謡「船ぬ親ユンタ」の主題による幻想曲 Fantasy on “Uninuyah Yunta” op.61
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OP.62 オルガンとマンドリンオーケストラの為の協奏曲〜紅葉をめぐって〜 Concerto for Organ and Mandolin Orchestra Op.62
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OP.63 歌「雪の教会クリスマス」(「クリスマスの晩」(詞:北原白秋)
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OP.64 マンドリンとオルガンの為のソナタ sonata for Mandolin and Organ op.64
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OP.65 マンドリンとオルガンの為のイントロダクションとフーガ Introduction and Fugue for Mandolin and Organ op.65
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OP.66 歌曲「悩み多きこの身に」(詞:田中英子)
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OP.67 クリスマスの歌3章
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OP.68 クリスマスの為の前奏曲とフーガ Prelude and Fugue on “Nativitate Domini” op.68
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OP.69 尺八・箏・オルガンの為の幻想曲「闇から光へ」 Fantasy for Shakuhachi Koto and Organ op.69
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OP.70 ソプラノとオルガンの為の『天国の窓』より3章 3Pieces from the Poetic Works “Heaven’s Window” by Masahide Haresaku for Soprano and Organ op.70
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OP.72 ソプラノとオルガンの為の「天国の窓」より「大切なともだち」
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OP.73 ソプラノとオルガンの為の「天国の窓」より「君は光」
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OP.74 尺八・箏・オルガンの為の幻想曲「一陽来復」
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OP.75 箏とオルガンの為のレシタティーフとフーガ
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OP.76 尺八とオルガンの為のアリアとフーガ
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OP.77 ソプラノとオルガンの為の『天国の窓』より「朝の気配」
「心象的イメージ」とは
初期の作品の中に記載されているものがあります。酒井の意図としては、以下のとおりです。
「J.Sバッハは何年に生まれて」とか「この曲は何の形式で」という解説は、作品に対する三人称的アプローチにすぎない。演奏会というものは、それが一回性に根ざすものであるならば、二人称の関係において成りたつものであると私は考える。それゆえ、私が現在この作品に何を感じ、何に注目しているかを述べる方が、より実際的な意味があると思えるので、現在の私の心象的イメージを語らせていただくことにしたいと思う。
【1983年11月23日パイプオルガンコンサートNo19パンフレットより】
曲目解説を引用、転載いただく場合には、出典「酒井多賀志公演会 記念事業HPより」と明記してください。無断転載はご遠慮ください。